ぷうのカンヅメ 日本語Ver
なにぶん不幸なおいたちじゃったもんで
短気であばれもので、たいへんグレた目をしておったということじゃ。
旅ねこは ぷうのカンヅメをさがしておった。
なんでも ぷうのカンヅメにゃ この世でいっちばんすばらしい宝物が入っとるちゅう、うわさがあったからのう。
「カンヅメさえあれば大金持ちになれる」 旅ねこはいつも考えちょったんだって。
さむい国、あつい国、すずしい国。あったかい国。
ぷうのカンヅメの話はどこへ行っても聞けなんじゃった。
南の南ずーっと南の島に、何でも知っとる長老さまがおるとのことじゃった。
それはそれは たいへんな旅じゃった。
南の島につくころにゃ ぐれた目はますますつりあがり とても暗い色になっておったそうじゃ。
長老さまは島の守り神。
長老さまの家はすぐにわかった。
石とはっぱでできた門をくぐった旅ねこは、おどろいてしもた。
大きな大きな目!
旅ねこは めいっぱい勇気を出して聞いた。
「ぷうのカンヅメどこにある?」
朝がきて、夜がきて、また、朝がきて。
もう何日たったかわからんようになったころ、ようやくシーサーさまは口をひらいた。
「見よ。聞け。ぷうのカンヅメは どこにでもある」
シーサーさまはそれだけ言うと、またかたく口をとじてしまい、もう何もこたえてくれんかった。
旅ねこは待った。また何かこたえてくれんかとまった。だまってまった。じっと座ってまった。
朝がきて、夜がきて、また、朝がきて。もう何日たったかわからんようになったころ、旅ねこはシーサーさまの家をあとにした。
旅ねこはぼんやりと、きらきら光る海を見ちょった。
するとどこからか、かわいい声が聞こえてきよった。
“近くて遠い 山ん中”
見回すと、ヤンバルクイナたちがおどっておった。
“くるりとまわった まわりみち ご用がなければ またおいで”
“暗い夜道は まよいみち ちょうちんさげておいでなさい”
旅ねこは山に向かって歩き出した。
けど、どの山に行けばいいかさっぱりわからん。
つかれはてて木の下にすわりこんだ。
その時じゃった。
目の前をかごとちょうちんをかついだねずみたちが行列をなして歩いておった。
<エッホ エッホ とらやさん><ぷうのカンヅメわけとくれ>
<エッホ エッホ とらやさん>
見ると 真っ暗な山の真ん中に ぽつんぽつんと2つの明かりがあった。
旅ねこは、あとについて走り出した。
2つの明かりは近づくにつれ、だんだんと大きくなって、やがてねずみたちたちは明かりの中に入っていった。
旅ねこがこっそりのぞいていると、ねずみたちがきらきら光る小さなものをかごに詰め込んで
<エッホ エッホ とらやさん><エッホ エッホありがとう>
そこには今で見たこともないような、キラキラとした銀色の箱がたくさんあった。
(ぷうのカンヅメだ!)
旅ねこは、心の中でさけんで、一つに手をのばした。
むらさき色の炎が、ふわっとつつむと、カンヅメの中から、まだ耳の切れる前の小さな小さなねこが、たくさんたくさん飛び出して、旅ねこのまわりをかけまわった。
<にゃん> と、外から声がひびいた。
2つの明かりは、山ねこの目じゃった。とらやさんは山ねこのことじゃった。
山ねこは、まだ耳の切れるまでの小さな旅ねこをつれてどこへともなく消えていった。
不思議なことにあいたはずのカンヅメはまた閉まっていたそうな。
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